おいしさづくりの基礎知識
本みりん、醗酵調味料、みりん風調味料の違い
本みりんと類似調味料
「みりん」として使われている調味料は大きく3種存在します。酒類である「本みりん」と、一般食品である「みりんタイプの醗酵調味料」、「みりん風調味料」です。 本みりんの歴史は古く、当初は甘口の高級酒として飲まれていましたが、江戸時代になると調味料としての利用も始まりました。とはいえ、当時の本みりんはまだまだ高価なものであったため、料亭などの一部でしか広まりませんでした。 そして昭和に入り、酒税引き下げや製造技術の発展などから価格も手頃となり、一般家庭でも使われるようになりました。しかし、本みりんは「お酒」であることから、当時は小売酒屋での販売に限られていました。 そんな中、本みりん類似調味料として昭和に発売された醗酵調味料やみりん風調味料は、酒類でないことからスーパーマーケットでも購入できたため認知度も広まり、普及されていきました。 「本みりん」、 「醗酵調味料」、「みりん風調味料」はそれぞれ品目も品質設計も異なります。 同じ「みりん」として混同されやすい3種の調味料ですが、製造工程から出来上がる品質も異なり、その結果得られる調理効果も異なります。
製造工程の違い
各種調味料の製造工程を詳しく見てみましょう。
本みりん
本みりんの原料はもち米、米こうじ、醸造アルコール(または焼酎)など、酒税法で定められた原料に限ります。 前処理をした各原料を仕込みタンクなどで混合し、糖化・熟成を行います。
糖化・熟成の期間は約30~40日、長いと60日程度行われることもあります。 初期では、まだ米粒が残った状態ですが、米こうじ由来のアミラーゼやプロテアーゼによって徐々に分解され、中期には米粒が溶けて本みりんらしい甘味、旨味が形成されます。後期では、香気成分の生成や着色も進行し、本みりんらしい風味が形成されていきます。 糖化・熟成という、じっくりと時間をかけた工程を経ることで、本みりんの複雑な味わいが完成します。
醗酵調味料とみりん風調味料
醗酵調味料は、食塩を加えて不可飲処置した加塩醗酵液をベースに糖類や食塩、その他原料を加え、混合して出来上がります。不可飲処置により、1.5%以上の塩分を含みます。 みりん風調味料は、糖類や酸味料の他に、風味付与のため醸造調味料や旨味調味料も使われます。これらを混合し、出来上がります。 いずれも混合後はすぐ製品となって流通されるため、本みりんのような熟成による複雑な味わいは乏しくなります。
調理効果の違い
「みりん」として同じように使われている各種調味料ですが、使用する原料や製造工程の違いから含まれる成分は同じではありません。その結果、得られる調理効果にも違いが見られます。 本みりんでは、アルコールや糖化・熟成期間中に生成される様々な糖、有機酸などによって7つの調理効果がもたらされます(詳しくは、下記リンク「本みりんの調理効果」をご参照ください)。 一方、アルコールを含まないみりん風調味料では、「味のしみこみ向上」などのアルコールが関与する調理効果が得られにくい場合もあります。
出典
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(1)』,日本醸造協会誌,93巻10号,799-806(1998)
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(2)』,日本醸造協会誌,93巻11号,863-869(1998)