おいしさづくりの基礎知識
さまざまな「料理酒」
酒類調味料での「料理酒」
一般に「料理酒」と呼ばれているものは、原料や製造方法によって大きく「酒類調味料」と「食品調味料」に分けられます。 酒類調味料は、酒税法上の分類でさらに「清酒」と「合成清酒」に分けられます。それぞれどのような原料や製造方法でつくられているのかご説明します。
原料と製造工程
酒類は、酒税法という法律で使用できる原料、製法、品質要件が細かく規定されています。 清酒は、米、米こうじ、水を原料に仕込み、微生物の力で糖化、醗酵、熟成、といった非常に複雑な工程を経て製造されます。天然の原料、微生物の力、酒造りに適した水を使っているため、風味豊かに仕上がります。 一方、合成清酒ですが、一般的には醸造アルコールに、糖類や調味料、酸味料、清酒などを加え、風味や性状を清酒に似せてつくります。そのため、清酒と比べると、醸造ならではの風味はどうしても劣ります。
食品調味料での「料理酒」
食品調味料での「料理酒」とは、清酒タイプの醗酵調味料のことです。酒類調味料との大きな違いとして、食塩が含まれていることが挙げられます。 スーパーでは、酒類調味料と一緒に並べて売られているところもあります。購入の際、原材料表示を確認いただくと、酒類調味料の清酒または合成清酒なのか、醗酵調味料なのかが簡単に分かります。 一般的に、レシピなどで「酒」として表記されているものは、醗酵調味料ではなく、食塩の入っていない「清酒」を指します。
原料と製造工程
醗酵調味料の主原料は、清酒をつくる工程でもろみに食塩を添加してできる加塩醗酵液です。食塩を加えてお酒として飲めない処置(不可飲処置)をすることで、食品に分類されます。 清酒や合成清酒は酒類であるため酒税がかかりますが、食品調味料である醗酵調味料にはそれがなく、価格は酒類調味料よりも経済的になります。 一方で、醗酵調味料は加塩醗酵液に糖類など様々な副原料を混合して製造するため、清酒らしい風味は乏しくなってしまいます。
調理効果の違い
「清酒」、「合成清酒」、「醗酵調味料」は、原料や製造工程の違いから含まれる成分は同じではありません。その結果、得られる調理効果にも多少の差が見られます。 香りが豊かな「清酒」は、消臭効果や風味改善に特に有効です。また、醸造成分も豊富でコクやうま味の付与にも効果的です。食塩が含まれる醗酵調味料は、それ自体の塩分も加味する必要があるため、使用量や塩加減の調整は難しくなります。
出典
- 富川 泰敬 著,『令和3年版 図解酒税』,(財)大蔵財務協会
- 谷 久美雄,『「料理用清酒」の研究(第1報)-商品学的一考察-』,岐阜女子大学紀要,9号,27-40(1980)
- 河辺 達也,『酒類調味料の調理効果について』,日本醸造協会誌,第102巻第6号,