おいしさづくりの基礎知識
調理における料理酒(清酒)の有効成分
料理用清酒と飲用清酒の違い
「飲用清酒」、すなわち飲んでおいしい清酒は、味のバランスやキレのよさを重視するため、余分な酸味や雑味のない品質が求められます。 しかし、飲用清酒に求められないこれらの成分は、料理をおいしくする成分でもあります。 「料理用清酒」では、料理にコク・うまみをつける、素材の臭みを消す、といった効果をもたらす成分を豊富に含むように工夫して製造されています。
調理効果の違い
実際に料理に使用した際、調理効果でどのような違いがあるかを下表にまとめました。 それぞれ効果はありますが、「料理用清酒」の方がより高い調理効果を発揮します。 飲用清酒と料理用清酒、同じ清酒ですが、それぞれ目的に応じた品質設計がなされているため、使い分けて頂くことをおすすめします。
調理に有効な成分
料理用清酒ですが、どのような成分が調理効果をもたらすのでしょうか? 清酒は米、米こうじ、水を原料とし、酵母の力を借りて醗酵させることでつくられます。この過程でさまざまな成分が生み出されますが、その中でも調理効果に寄与する成分としては、アミノ酸、有機酸、香気成分、アルコールが挙げられます。
アミノ酸
清酒に含まれるアミノ酸は、原料である米に含まれるたんぱく質が酵素分解されて生成したものが主体です。たんぱく質は米の表層部に多く含まれるため、精米(米を削る工程)するほど原料米のたんぱく質含量は減少します。そのため、一般的に精米歩合の数値が高い料理用清酒よりも、米の表面を多く削る(精米歩合の数値が低い)吟醸酒などの方が、アミノ酸含量は少なくなります。
有機酸
清酒の主要な有機酸は乳酸で、コハク酸やリンゴ酸も比較的多く含まれます。この中でもコハク酸はうま味を呈する有機酸で、貝類の旨味成分にも挙げられるものです。これらの有機酸は、主に酵母の代謝によって生成されます。 一方で、こうじ菌によってクエン酸含量が多い米こうじを製造することもできます。焼酎の原料である黒こうじや白こうじがこれにあたります。この米こうじを原料にすると、クエン酸が豊富な料理用清酒になります。クエン酸は、魚や肉の臭み消しに効果的な成分です。
出典
- 谷 久美雄,『「料理用清酒」の研究(第1報)-商品学的一考察-』,岐阜女子大学紀要,9号,27-40(1980)
- 河辺 達也,『酒類調味料の調理効果について』,日本醸造協会誌,第102巻第6号,422-431(2007)
- 上田 隆蔵,『調味料としての酒』,日本醸造協会雑誌,75巻11号,903-907(1980)