おいしさづくりの基礎知識
焼き色とメイラード反応
おいしい焼き色
ここにA、B、2つの焼き鳥の写真があります。 どちらがよりおいしそうに見えるでしょうか?
Bの焼き鳥の方が焼き色が濃く、おいしそうに見えたのではないでしょうか。 おいしそうな焼き色からは、香ばしさも連想されて食欲がそそられます。また、食材が実際に焼けている様子も想像され、ジューシー感や本格感などプラスのイメージに繋がります。 一方、焼き色が十分でないと食べる前から物足りなさを感じ、そのイメージに引きずられた結果、おいしくないという印象を与えてしまうこともあります。 「焼く」という基本的な調理方法ですが、焼き色の付き方で見た目のおいしさの印象は大きく変わります。
メイラード反応
では、「焼き色」が生じるとき、どのようなことが起こっているのでしょうか? 食品を焼いたときにできる「焼き色」には、メイラード反応が関わります。 メイラード反応とは、アミノ酸などのアミノ化合物と、還元糖(ブドウ糖、果糖、乳糖など)などのカルボニル化合物による化学反応で、加熱によって促進されます。 この反応の結果、様々な物質が生成されますが、その中でも褐色の物質をメラノイジンといい、焼き色に関与します。メラノイジンは味噌や醤油にも存在しており、これらの色味の形成にも寄与しています。 焼き色をつけたい時は、メイラード反応を活用することで、おいしい焼き色をつけることができます。
香ばしさ
焼き色に関わるメイラード反応ですが、焼き色から香ばしさが連想されるように、香りの形成にも深く関与しています。 コーヒーやローストナッツなどの焙焼工程のある食品では、メイラード生成物であるピラジン類が香ばしさに寄与しています。 また、甘焦げやカラメル様の香気と言われるフラン類やマルトールもメイラード生成物です。 食品の焼き色だけでなく、香りの形成にも関わるメイラード反応は、おいしさづくりの中でも重要な化学反応です。
出典
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(2)』,日本醸造協会誌,93巻11号,863-869(1998)
- 奥村 蒸司,『メイラード反応とフレーバーの生成』,日本醸造協会誌,88巻3号,178-187(1993)