おいしさづくりの基礎知識
本みりんの複雑な風味を形成する成分
目次
本みりんの複雑な風味
本みりんは、もち米、米こうじ、醸造アルコール(または焼酎)で仕込んだもろみを、時間をかけて熟成させた後、圧搾、ろ過してできる酒類です。 熟成期間は約30~40日と長期に渡ります。その間に生成される多種多様な成分は、本みりんの複雑な風味を形成します。 本みりんにはどのような成分が含まれているのでしょうか? 主な成分は、糖、アミノ酸、有機酸、香気成分、アルコールの5つです。これらの働きで、本みりんはさまざまな調理効果を発揮します。
糖
本みりんの約45%は糖分で、これらは米こうじの働きによってもたらされます。 糖の約8割はグルコース(ブドウ糖)で、残りはマルトースやイソマルトースなどの二糖類、パノースなどの三糖類、さらに長鎖のオリゴ糖で構成されます。 このように、オリゴ糖を含む複数の糖から成り立つ本みりんの甘さは、複雑で奥行きのある甘さと表現されます。代表的な甘味調味料である砂糖と比べると、砂糖はスクロース(ショ糖)という単一成分でできており、成分の違いからも本みりんの甘さは砂糖とは異なります。
アミノ酸、有機酸
本みりんに含まれるアミノ酸やペプチドなどの窒素成分は、もち米や米こうじに含まれるたんぱく質が酵素分解されて生成したものが主体です。そのため、比較的精米歩合の高い米を使用し、旨味成分が残るようにします。 日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、本みりんのアミノ酸には、旨味を示すグルタミン酸やアスパラギン酸が他のアミノ酸よりも比較的多く含まれます。 有機酸は、米こうじの製造過程で、こうじ菌や乳酸菌によって生成されたものが主体です。最も含有量の多い有機酸は乳酸で、クエン酸やリンゴ酸、コハク酸、フマル酸なども含まれます。 クエン酸含量が多く、焼酎などの原料に使用される白こうじを使うと、クエン酸が豊富な本みりんが製造できます。クエン酸が多いことで、魚や肉の臭み消しに効果的な本みりんとなります。
香気成分
本みりんは糖分が高く、窒素分やアルコールも含む調味料であるため、長い熟成期間中に様々な反応が起こり、多種多様な香気成分が生成されます。 香気成分の生成経路としては、糖の分解やアミノ酸の非酵素的酸化分解によるカルボニル化合物の生成、アルコールと有機酸の反応によるエステル類の生成などが挙げられます。 また、生成されたカルボニル化合物がさらにエタノールと反応してアセタール類を生じるなど、反応は多岐に渡り、本みりん独自の複雑な香りが形成されていきます。
出典
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(1)』,日本醸造協会誌,93巻10号,799-806(1998)
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(2)』,日本醸造協会誌,93巻11号,863-869(1998)
- 『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』,文部科学省