おいしさづくりの基礎知識
焼酎の料理への利用
焼酎の調理効果
焼酎は飲み物として飲まれることが多く、調味料として料理に積極的に利用されてはいません。しかしながら、焼酎に含まれるアルコール分や焼酎独特の香りは、料理に活かすことができます。
アルコールによる調理効果
本みりんや料理用清酒のページにも記載しているように、アルコールには調理に役立つ効果が複数あります。例えば、煮物の調味液にアルコールが含まれると具材に味がしみこみやすくなります。また、素材の臭み消し(アルコールの共沸効果)や煮崩れを防ぐ効果もあります。 焼酎は、本みりんや清酒に比べると甘味やうま味に寄与する成分が少ないため、スッキリとした味わいに仕上げたい時に適しています。
焼酎の香りの活用
焼酎の香りは原料の種類や蒸留方法、貯蔵方法によって多岐に渡ります。芋焼酎では、使用するサツマイモの品種によって感じられる香りは様々で、焼き芋様の香りやフルーティーな香りもあります。また、蒸留という加熱工程で回収された香気成分は熱に強い特性があるため、加熱工程のある料理に使っても焼酎の香りは残りやすくなります。
焼酎の種類
焼酎は、その蒸留方法から連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)と単式蒸留焼酎(乙類焼酎)に分けられます。蒸留方法の違い以外にも含まれるアルコール分の上限が異なり、連続式蒸留焼酎では36度未満、単式蒸留焼酎では45度以下という酒税法上の決まりがあります。
連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)
連続式蒸留では、蒸留機の中で何度も蒸留が繰り返されるようにしてアルコールと水以外の成分が除かれます。そうして出来上がった焼酎は、非常にクリアな風味となります。 市販品例:ホワイトリカー
単式蒸留焼酎(乙類焼酎)
単式蒸留焼酎は、連続式蒸留機以外の蒸留機で蒸留したものです。連続式蒸留に比べて原料由来の香りを残しやすく、その香りが商品の特徴にもなります。 市販品例:芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、泡盛、黒糖焼酎、しそ焼酎
料理への利用例
豚の角煮のようなラフテーという沖縄料理には泡盛が使われます。泡盛を使うことで、豚肉の臭みを消し、やわらかく仕上げることができます。焼酎を利用する料理は、焼酎の生産量が多い九州の郷土料理に多く見られます。
豚骨(とんこつ)
鹿児島県の郷土料理で、豚の骨付きあばら肉を味噌や醤油で煮込んだ料理です。調味液に芋焼酎を使い、豚の臭みを消します。
ひきとおし
長崎県壱岐市で食べられている鍋料理です。名産品である壱岐焼酎が使われることもあり、鍋のスープに焼酎をたっぷり使います。
野沢菜漬
長野県の名産品である野沢菜漬にも焼酎が使われる場合があります。アルコール分35度の甲類焼酎を使い、主に防カビ・防腐目的での利用ですが、風味付けの役割もあります。
調理効果に特化した焼酎(料理用焼酎)
焼酎は、清酒や本みりんよりも酒税法上で使用できる原材料の幅が広く、米以外に芋や麦、トウモロコシや黒糖などを使用した、様々な種類の焼酎が存在します。 焼酎製造に携わる当社では、そのノウハウを活かして調理効果に特化した焼酎(料理用焼酎)を加工・業務用商品に取り揃えております。料理用焼酎は、特に素材の臭み消しに効果的な原料です。中でも『料理用マスキング焼酎〈玉ねぎ〉』という商品は、加工食品の製造時に生じやすい加熱臭(レトルト臭)やムレ臭といった含硫化合物由来のにおいを抑制することができます。 下記リンク先に使用事例や商品情報がございますので、是非ご覧ください。
出典
- 富川 泰敬 著,『令和3年版 図解酒税』,(財)大蔵財務協会
- 農林水産省,『うちの郷土料理』(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html, 2024年1月取得)
- 高倉 裕,『消臭機能に特化した調味料の開発』,月刊フードケミカル,37巻11号,25-30(2021)