おいしさづくりの基礎知識
においの解決策① ~化学反応によるにおい物質の低減~
化学的消臭方法
食品の不快なにおいとその要因は様々です(「食品の不快なにおい」ページをご参照ください↓)。 これら不快なにおいに対する消臭方法は、大きく3つに分けられます。 ①化学的消臭方法 ②物理的消臭方法 ③感覚的消臭方法 ここでは、①化学的消臭方法についてご説明します。 化学的消臭方法とは、においの原因物質を化学反応によって低減する方法です。
魚の生臭み
魚の生臭みの原因物質の一つであるトリメチルアミン(TMA)はアルカリ性の物質で、酸性の物質とあわせて中和することで、においを低減することができます。 焼き魚にレモンなどの柑橘類をかけて食べることがありますが、これは柑橘類の有機酸が生臭みを抑えてくれ、魚をおいしく食べられるためです。 下ごしらえや調理の際も、お酢や清酒などの有機酸を含む調味液を使うと効果的です。
脂質酸化臭
魚や肉に含まれる金属イオンは、脂質の酸化を促進します。そのため、鉄分の多い血合い肉を含む部位は、特に脂質酸化が進みやすくなります。 金属イオンが存在する限り、時間経過とともに不快なにおいは増していきますが、金属イオンの働きを阻害すれば酸化を抑えることができます。 レモンや白麹(焼酎の原料)などに含まれるクエン酸には、金属イオンを捕捉する効果(キレート効果)があります。金属イオンの働きを阻害して酸化を抑え、脂質酸化臭(ヘキサナール等)の発生を低減することができます。
含硫化合物のにおい
レトルト食品や卵、アブラナ科の野菜(大根やキャベツなど)、大豆たんぱくなどで見られる不快なにおいの原因物質の一つに含硫化合物(硫化水素、メチルメルカプタン、スルフィド類など)が挙げられます。含硫化合物はごく微量でも異臭として感じやすい物質で、硫黄温泉で嗅ぐあの独特のにおいも含硫化合物(硫化水素)によるものです。 レトルト食品などで見られる含硫化合物の生成経路に含硫アミノ酸の加熱が挙げられます。この生成反応の抑制には、玉ねぎ由来成分が効果的であることが見出されています。
出典
- 高倉 裕,『高付加価値酒類調味料の開発』,食品工業,45巻9号,54-59(2002)