おいしさづくりの基礎知識
だしとは
日本のだし
「だし」とは、肉や野菜、乾物などを煮出した「出し汁」の略称で、料理の風味の骨格となるものです。日本料理の「だし」は、西洋料理では「スープストック」、中華料理では「湯(タン)」に相当し、動物性、植物性の様々な材料が用いられます。 日本の「だし」の特徴は、「素材の良さを引き出す」ことにあると言われています。強いうまみのある肉料理中心の西洋料理、中華料理と比べ、日本料理では魚介や野菜など様々な食材が用いられ、素材そのものの味を活かす調理が好まれてきました。
日本のだしのルーツ
日本の「だし」のルーツは縄文時代までさかのぼります。 この時代での土器の発展により、調理で“煮る”という技術が生まれたといわれています。発掘された縄文土器にも、煮沸に使われて上下の色が変化したであろう痕跡を残したものが確認されています。 野草や木の実にはじまり、魚や肉も煮て食べられるようになり、その結果、煮汁のおいしさにも気づき、煮汁(=だし)の利用も始まったのではないかと考えられています。そして、7~8世紀の文献には、かつお節やこんぶが登場します。かつお節が現在のような形になったのは、戦国時代から江戸時代初期です。その頃、こんぶや煮干しも全国に広がり、江戸時代に「だし文化」が開花していきました。
だしの種類
日本料理で主に使われるだしの原料は、節類とこんぶです。 節類の代表格といえばかつお節で、多少の地域差はあれど全国的に使用されています。ひとくちに鰹節といっても、製造工程、産地、使用部位などの違いで風味も多岐に渡ります。また、こんぶも種類や産地により風味が異なるため、それぞれ好適用途も変わってきます。
節類とこんぶの他にも、自然界にある様々な材料からだしをとって利用してきました。 材料ごとに風味やうま味成分が異なり、料理に合わせて使い分けながら、受け継がれてきました。
だしのうまみ
こんぶのうま味成分である「グルタミン酸」と、かつお節のうま味成分である「イノシン酸」、しいたけのうま味成分である「グアニル酸」が共存すると、飛躍的にうまみが強まるという「うまみの相乗効果」が知られています。その他にも、各種アミノ酸やペプチド、有機酸などの呈味成分や素材の風味が合わさり、だしのおいしさが形成されています。
出典
- 藤村 和夫 著,『だしの本』,ハート出版
- 伏木 亨 著,『だしの神秘』,朝日新聞出版
- 『日本料理店のだし図鑑』,柴田書店
- 太田 静行 著,『だし・エキスの知識』,幸書房