おいしさづくりの基礎知識
味の種類と相互作用
基本五味
おいしいと感じるためには、食品の香りや見た目も大切な要素ですが、やはり「どのような味わいか」ということが最も重要です。 味の種類には基本五味と呼ばれる「甘味、塩味、酸味、苦味、旨味」と、基本五味には含まれませんが、味の嗜好性に深く関わる「渋味、辛味」があります。 これらの味のバランスが、おいしさづくりの上では重要なポイントとなります。
主な呈味成分と食品例
コクの増強
官能評価では、基本五味に加えて「コク」を評価項目にする場合があります。 基本五味を増強させて厚みや広がりが付与された時に感じられるものが「コク」とされ、コクを増強することでおいしさを向上することができます。 コクを増強する方法はさまざまです。例えば、ペプチドが豊富なエキス原料、本みりんや酒粕に含まれる醸造成分、乳製品や油脂などを活用し、食品に自然なコクを付与します。
塩カド、酢カド
基本五味に含まれる塩味、酸味が食品中にバランスよく含まれていないと、塩カド、酢カドがあると言われ、好ましくない味つけとされます。 塩カドや酢カドを抑え、味のバランスを整えるために特に有効な調味料は、本みりんです。 本みりんに含まれている糖類、ペプチド類やアミノ酸などの効果で塩カド、酢カドを抑え、まろやかでバランス良い味に仕上げることができます。
味の相互作用
味覚は化学物質によってもたらされますが、口中で混ざることで互いに影響し合います。 これを味の相互作用といい、主に3つの相互作用が知られています。
相乗効果
相乗効果は、同質の味覚成分が合わさることで、その味覚が数倍に高まることを言います。うま味成分での事例がよく知られており、核酸系とアミノ酸系のうま味成分が合わさると、単独で味わうよりもうまみを強く感じるようになります。 例えば、かつお節のイノシン酸ナトリウム(核酸系)と、こんぶのグルタミン酸ナトリウム(アミノ酸系)の組み合わせは、和食のおいしさに深く関わる要素です。
抑制効果
抑制効果は、異なる味覚が合わさることで一方の味覚が弱められることを言います。 甘味と苦味、甘味と酸味、塩味と酸味でそれぞれ抑制効果が確認されています。甘味と苦味の事例として、コーヒーに砂糖を入れると苦味を弱く感じることが挙げられます。
対比効果
対比効果は、異なる味覚が合わさることで一方の味覚が強められることを言い、甘味と塩味、塩味と旨味でこの効果が確認されています。 事例としては、すいかを食べるときに塩を振って食べると甘味を強く感じることが挙げられます。
出典
- 伏木 亨 編著,『光琳選書① 食品と味』,光琳
- 古川 秀子 編著、上田 玲子 共著,『続 おいしさを測る 食品開発と官能評価』,幸書房