おいしさづくりの基礎知識
料理酒(清酒)の調理効果
①素材の臭みを取り、清酒のよい香りをつける
料理用清酒に含まれるアルコールには、揮発していく際に不快なにおいも一緒に取り除いてくれる効果(共沸効果)があります。 また、料理用清酒に含まれる有機酸には、魚の生臭み成分であるトリメチルアミン(TMA)などのアルカリ性成分と中和反応することで、においを抑制する効果があります。 さらに、料理用清酒を醸造する過程で発生する清酒らしい香気成分により、不快なにおいを覆い隠してマスキングすることもできます。
②味をしみこみやすくする
煮物などの味をしみこませる料理において、料理用清酒を使用して調味液中にアルコールを存在させると、甘味やうま味などの味に関わる成分が具材に移行しやすくなり、味がしみこみやすくなります。
③素材をやわらかくする
アルコールには、素材をやわらかくし、食感をよくする効果もあります。肉料理の下漬けや調味液に料理用清酒を用いると、やわらかく仕上げることができます。
④コク・うまみをつける
料理用清酒は、こうじ菌や酵母の働きを活用して料理をおいしくさせる成分が豊富に含むようにつくられています。 こうじ菌からは、有機酸豊富な米こうじがつくられたり、こうじ菌由来の各種分解酵素によって原料である米のでんぷんやたんぱく質が分解され、糖やアミノ酸が生み出されます。 また、その糖を酵母が食べることでアルコール発酵がおこり、さらに多様な有機酸が生み出されます。これらの成分が主体となって、料理にコク・うまみをつけます。
⑤おいしさを閉じ込める
料理用清酒に含まれるアルコールや醸造成分には、素材本来のうまみを閉じ込める効果があります。例えば、料理用清酒を薄めた液に素材を下漬けしてから調理に使うことで、素材のおいしさを活かすことができます。
出典
- 谷 久美雄,『「料理用清酒」の研究(第1報)-商品学的一考察-』,岐阜女子大学紀要,9号,27-40(1980)
- 河辺 達也,『酒類調味料の調理効果について』,日本醸造協会誌,第102巻第6号,422-431(2007)
- 上田 隆蔵,『調味料としての酒』,日本醸造協会雑誌,75巻11号,903-907(1980)
- 金子 ひろみ,『料理に使う日本酒の効果』,日本醸造協会誌,105 巻7 号,447-454(2010)