おいしさづくりの基礎知識
かつお節のはなし
かつお節ができるまで
かつお節の製造工程は原料であるカツオを3枚におろすことからはじまります(生切り)。その後、籠立て、煮熟、焙乾、あん蒸工程を経たものが荒節となります。荒節の表面を削り、カビ付けしたものが枯節となります。
焙乾工程
焙乾工程には、「手火山(てびやま)式」、「炊納屋(たきなや)式」、「焼津式」の3通りあります。「手火山式」は最も古い方法で、掘り下げた地面で薪を燃やし、その上に煮熟したかつおを並べた籠を積み上げて焙乾します。かつおが煙を浴びやすく、燻臭が強いかつお節に仕上がります。「炊納屋式」(別名「急造庫式」)は、2~3階構造の焙乾室の1階または地下で燻煙を起こす方法で、手火山式の大型版です。手火山式と同様に、燻臭がつきやすいのが特長です。「焼津式」は、燻煙をファンで強制的に循環させる近代的な方法です。他の方法よりも燻臭は弱くなりますが、その分、かつお本来の風味を楽しめます。
かつお節のうまみ
かつお節のうま味成分である「イノシン酸」は、かつおが生きている間にはほとんど含まれません。イノシン酸は、かつおの死後一定時間後に下図のような変化を経て生成し、さらに時間が経過すると、イノシン、ヒポキサンチンへと、うまみのない成分に分解が進んでしまいます。かつお節の製造における「煮熟」工程は、イノシン酸分解酵素を失活させ、うま味成分を最大限に残すという、まさに先人の知恵です。 他にも、かつお節にはグルタミン酸やヒスチジンなどのアミノ酸、乳酸などの有機酸といった様々な呈味成分が含まれ、これらがかつおだしの中で複雑に絡みあうことで、うまみ、コク、まろやかさなどが引き出されています。
かつお節の香り
かつお節の香りは非常に複雑で、300種類以上の有効成分の組み合わせで形成されています。荒節の香りは、主に3種類に分けられます。
枯節は、荒節の表面を削ることで「燻臭」の総量は減少します。また、 カビの作用により一部の燻臭成分が変化し、よりマイルドな燻臭になります。
出典
- 藤村 和夫 著,『だしの本』,ハート出版
- 伏木 亨 著,『だしの神秘』,朝日新聞出版
- 『日本料理店のだし図鑑』,柴田書店
- 太田 静行 著,『だし・エキスの知識』,幸書房