おいしさづくりの基礎知識
煮崩れ~その要因と防止する方法~
煮崩れの要因
食材の煮崩れは料理の見栄えに大きく影響するため、防ぐために様々な工夫がなされています。カットした食材の角を取る「面取り」作業も、煮崩れを防ぐ昔ながらの方法です。 煮物全般に言えることですが、煮崩れが起きてしまう大きな要因の一つは、強すぎる火力です。強火で煮込んでしまうと、材料が鍋の中で動き回り、その衝撃で材料の形が崩れてしまい、煮崩れが起こりやすくなります。 また、「煮崩れを起こしやすい料理」の代表格である肉じゃがでは、加熱調理による細胞組織への影響も煮崩れしやすい要因となります。じゃがいもの煮崩れはなぜ起こりやすいのでしょうか?
細胞壁の崩壊
じゃがいもなどの野菜の細胞壁は主にセルロース、ペクチン、ヘミセルロースという多糖類で構成されています。その中でもペクチンは、細胞壁の構築や細胞同士をつなぎとめる役割を果たします。じゃがいもを加熱すると、このペクチンが溶け出してしまい、細胞壁が壊れたり、細胞同士の接着がはがれたりし、形を保ちづらい状態になります。その結果、じゃがいもの形が崩れていき、煮崩れが起こります。
煮崩れを防ぐには
上述の煮崩れの原因となる細胞壁の崩壊ですが、これを防ぐにはアルコールの利用が有効です。 アルコールには、加熱時にペクチンの溶出を抑える作用があり、煮崩の抑制に大きく寄与します。また、アルコールを単独で使用するよりも、糖と共に用いることで、より効果的に煮崩れを防止することができるといわれています。 下図は、加熱調理時に本みりんを使用(または不使用)した際のじゃがいもの細胞壁の様子を電子顕微鏡で観察したものです。本みりん使用では、細胞壁が崩れずに形を保っていることが分かります。本みりんはアルコールと様々な糖を含むため、煮崩れを防ぐのに適した調味料です。
出典
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(2)』,日本醸造協会誌,93巻11号,863-869(1998)
- 高倉 裕 他, 『本みりんの調理特性に関する研究(第2報)-ジャガイモの煮崩れ防止効果-』日本調理科学会誌,33巻2号,178-184(2000)