おいしさづくりの基礎知識
本みりんの調理効果~7つの調理効果について~
①複雑で奥行きのある甘みをつける
本みりんにはブドウ糖やオリゴ糖など、多くの種類の糖が含まれるため、料理に複雑で奥行きのある甘みをつけることができます。 こうしたさまざまな糖は、本みりんが熟成される過程で作られていきます。
②てり・つやをつける
一般的に、糖類を用いると食品にてり・つやを付与することができますが、本みりんのように多種類の糖を含むものの方が、効果を得るには好ましいとされています。 (「てり・つやのはなし」も下記リンク先からご参照ください。)
③コク・うまみをつける
本みりんには糖の他に、多種類のアミノ酸も含まれます。その中でも、うまみを示すグルタミン酸やアスパラギン酸が他のアミノ酸よりも比較的多く含まれます。また、本みりん特有の重厚で甘みのある香りは、食品の風味に厚みを与えます。
④塩や酢のカドをとってまろやかにする
塩や酢を活かす料理では、味付けのバランスが悪くなるとカドが立った味わいになってしまい、おいしさが損なわれます。そういった時に本みりんを使うと、本みりんに含まれる糖やアミノ酸などの働きにより、塩や酢のカドが取れ、まろやかに仕上がります。
⑤味をしみこみやすくする
本みりんは酒類であるため、アルコールを含みます。アルコールが煮物などの調味液中に存在すると、甘味やうま味などの味に関わる成分が具材に移行しやすくなり、味のしみこみが向上されます。味のしみこみがよくなると、調理時間の短縮にもつながります。
⑥素材の臭みを消す
本みりんに含まれるアルコールには、揮発していく際に不快なにおい成分も一緒に取り除いてくれる効果(共沸効果)があります。
⑦煮崩れを防ぐ
煮崩れの有無は、料理の出来栄えを決める大きな要素の一つです。 煮崩れを起こしやすい料理の代表格といえば肉じゃがです。じゃがいもの煮崩れは、じゃがいもに含まれるペクチンという多糖類が関わります。ペクチンは、細胞壁の構築や細胞同士をつなぎとめる働きを持ちますが、加熱によって溶け出してしまう性質もあります。ペクチンの溶出により、細胞壁が壊れたり細胞同士の接着がはがれたりし、結果、煮崩れが起こってしまいます。 煮崩れを防ぐ方法に、アルコールの使用があります。アルコールには、ペクチンを溶けにくくする作用があり、煮崩れの抑制に大きく寄与します。また、この作用はアルコール単独よりも糖と共に用いることで、より効果が発揮されるといわれています。 下図は、加熱調理時に本みりんを使用(または不使用)した際のじゃがいもの細胞壁の様子を電子顕微鏡で観察したものです。本みりん使用では、細胞壁が崩れずに形を保っていることが分かります。本みりんはアルコールと様々な糖を含むため、煮崩れを防ぐのに適した調味料です。
出典
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(1)』,日本醸造協会誌,93巻10号,799-806(1998)
- 河辺 達也、森田 日出男,『みりん(2)』,日本醸造協会誌,93巻11号,863-869(1998)
- 中村 光良、松田 秀喜,『本みりんの調理効果とその利用』,食品工業,46巻21号,36-44(2003)